メオ族の村
ドイステープ寺院よりもさらに山奥、タイ国王のサマーハウス・プーピンパレスを過ぎて、山道を20分ほど進んだところに、山岳少数民族メオ族の村(メオ・トライバル・ビレッジ=メオ・トライブ・ビレッジ)があります。
チェンマイから、もっとも近くにある山岳民族の村です。
標高1,600メートルを超える高地にあるため、夏でもあまり暑さを感じません。
メオ族の村ドイプイは、美しい山並みに囲まれた風光明媚な場所にあります。
タイ政府の統計によると、山岳部に住む少数民族はおよそ100万人で、タイの全人口の2%弱を占めているそうです。
そのなか、メオ族の人口は約15万人を数え、カレン族に次いで二番目に人口の多い山岳民族になります。
メオ族のルーツは中国です。現在はタイをはじめ、ベトナムやラオスにも暮らしています。
ちなみにメオ族という呼称ですが、メオ族の人々は「メオ族」と呼ばれることを好まず、「自由」を意味する「モン」を自称し、モン族と自分たちを呼んでいます。
ドイプイのメオ族は、正式には黒モン族と呼ばれる民族です。
山岳民族の暮らしぶりを手軽に体験するには、ドイプイにあるメオ族の村はチェンマイからのアクセスの便がよく、最適といえるでしょう。
チェンマイ市内から近い分、かなり観光地化されていますが、それでもメオ族の人々が実際に暮らしている村だけに、山の民の暮らしぶりを、肌で感じることができます。
メオ族の村のなかは、お土産屋さんが軒を連ね、チェンマイのサンデーマーケットやバザールと、同じような活気に満ちています。
なかでも目立つのが、きれいな刺繍が入った布製の手工芸品です。
メオ族のもつ伝統的で精緻な刺繍の技術は、芸術的な価値が認められていて、とても人気があります。
世界中からバイヤーが買い付けに訪れるほどです。
衣料・バック・財布・ポーチなどなど、メオ族独自の色使いをふんだんに盛り込んだ手工芸品は、お土産としても喜ばれることでしょう。
アクセサリーや雑貨、お茶やドライフルーツなどの食品も、たくさん並べられています。
お土産屋さんを過ぎて奥まで進むと、メオ族の村落の入り口が見えてきます。
道の脇には、黒地に鮮やかな赤い刺繍の入った衣装が並べられています。
メオ族の伝統的な民族衣装です。
メオ族の女性の衣装は、ろうけつ染めのプリーツスカートが特徴です。
民族衣装はレンタルされていて、ここで着替えてメオ族の民族衣装をまとったまま記念撮影をしたり、村の中を散策することもできます。
観光シーズンともなると多くの観光客が訪れ、民族衣装に着替えるため、本物のメオ族の人は誰なのか、見分けがつきにくくなります(笑)
村落に入ると、段々になった大きな庭園が見えてきます。
この庭園の一角で、ケシの花が栽培されています。
もちろん、今では観光用に栽培されているだけですが、かつてはケシの乳液からアヘンをとり、麻薬の原料として使われていました。
メオ族とアヘンとの結びつきは深く、メオ族の人々にとってケシの栽培は、長いこと主たる収入源を占めていました。
今はタイ政府による支援のもと、ケシの栽培は禁じられ転作化が進められるとともに、観光に力を注ぐようになっています。
花畑を越えて、もう少し奥の方に進むと、ドイプイの滝と池があります。
池ではメオ族の子供たちが、よく水浴びをして遊んでいます。
滝のすぐ横には、守り神らしき女神様があります。
メオ族の村には博物館もあり、山岳民族に関する資料が展示されていますから、忘れずにチェックしましょう。
竹で囲われた土間に、家財道具やカマド、屋敷や祖先のカロク(kalok)を祀るところなどを見学できます。
10年ほど前に電気も電話も引かれたことで、メオ族の村も急速に近代化が進んでいます。
軒を連ねる民家は、日本人の感覚からすると粗末という印象をぬぐえませんが、庭先には立派なサテライトアンテナが据え付けられている家もあり、なんとなく違和感を覚えます。
それでもメオ族の人々の暮らしぶりは、電気が通っていない頃と今も大差はなく、夜10時を過ぎると、ほとんどの人が眠りにつきます。
その代わり朝は早く、4時には起き、山仕事や農作業に出て行きます。
メオ族の村ドイプイには小学校もあり、13歳までは義務教育を受けられるようになっています。
2010年の統計では120名ほどの生徒がおり、実際に学校に通っているのは60~70人ほどで、残りの50~60人は学校には行っていません。
学校に通う代わりに、女の子はお母さんを助けながら子守をし、男の子はお父さんについて山や野良仕事に出て行きます。
日本人をはじめ外国人の感覚からすると、この実態になにかいたいげなものを感じますが、村で生きていくのであれば、知識よりも山・野良仕事・子守などの経験を積む方が、はるかに重宝することも事実です。
メオ族の村ドイプイには、今の日本では失われてしまったなにかがあるようで、はじめて訪れた地なのに、なぜか懐かしさを覚える人が多いようです。
メオ族の村 ギャラリー
メオ族(モン族)の村観光を含むツアーリストです。